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開業の手続きと順番

法人化の手順と費用:株式会社と合同会社の違いと、設立後の届出

この記事の結論

  • 設立にかかる主な費用は、株式会社なら登録免許税(最低15万円)+定款の認証手数料(1万5千円〜5万円)、合同会社なら登録免許税(最低6万円)。紙の定款には別に4万円の収入印紙が要る
  • 手順は、定款を作る →(株式会社は公証役場で認証)→ 資本金を払い込む → 法務局で設立登記。会社は設立の登記によって成立する
  • 設立後は、税務署への法人設立届出書(2か月以内)、青色申告の承認申請書(3か月以内など)、年金事務所への新規適用届(5日以内)、個人事業の廃業届を忘れずに出す

法人化(法人成り)を決めたら、次に迷うのは「株式会社と合同会社のどちらにするか」と「いくらかかるか」です。設立の手続きそのものより、設立したあとの届出のほうが種類が多く、出し忘れが起きやすいところです。

この記事では、国税庁・日本公証人連合会・日本年金機構などの資料(2026年10月26日確認)をもとに、法人化の手順と費用を、株式会社と合同会社に分けて整理します。法人化を考え始める目安は、個人で開業して1〜2年目、法人化を考え始める目安ときっかけにまとめています。

開業時に法人を選ぶ人は4割ほど

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」で、開業時の経営形態は個人企業が57.0%、法人企業が43.0%でした。調査の対象は、日本政策金融公庫が2024年4月〜9月に融資した、融資の時点で開業後1年以内の企業です(回答2,165社)。

半分以上が個人で始めていて、事業が軌道に乗ってから法人にする人も少なくありません。そのときは、会社の設立と同時に、個人事業をやめる手続きも必要になります。

株式会社か合同会社か、現場で見ること

支援の現場で法人化の相談を受けると、株式会社を選ぶ人のほうが多い印象です。一方で、多くはありませんが、費用を抑えたい一人の事業者が合同会社を選ぶこともときどきあります。手続きは、司法書士や税理士に任せる人もいれば、会社設立のサービスを使って自分で進める人もいます。

法人化でよくある失敗

国税庁や日本年金機構の資料をもとに、会社を作ったあとに起きやすい失敗を挙げます。

  1. 設立の費用だけで予算を組む:登録免許税などのほかに、設立後は社会保険料や法人住民税の均等割(赤字でもかかる)が毎年かかります。
  2. 青色申告の承認申請書を出し忘れる:設立第1期から青色申告にするなら、設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日の、いずれか早い日の前日までに出します(国税庁 No.5100)。個人のときに青色申告をしていても、会社では改めて申請が必要です。
  3. 社会保険の手続きを後回しにする:日本年金機構によると、法人の事業所は社長1人だけでも健康保険・厚生年金保険の適用事業所になり、新規適用届は事実発生から5日以内に出します。
  4. 役員報酬を期の途中で変える:国税庁 No.5211 によると、役員報酬を会社の経費(損金)にするには、原則として毎月同じ額で払う「定期同額給与」にする必要があります。額を変えられるのは、原則として事業年度の初めから3か月以内です。それ以外の時期に上げ下げすると、経費にならない部分が出ることがあります。
  5. 個人のインボイス登録が会社でも使えると思う:インボイスの登録番号は、個人と法人で別のものです(法人は「T+法人番号」)。会社として取引先にインボイスを出すなら、会社として登録申請をします。個人の登録は、消費税の「事業廃止届出書」を出すと、廃止した日の翌日に失効します(国税庁の新規開業者向けQ&A)。
  6. 個人事業の廃業届や、最後の確定申告を忘れる:会社を作っても、個人事業の手続きは別です。消費税の課税事業者だった人は、所得税の廃業届とは別に、消費税の事業廃止届出書も出します。

株式会社と合同会社の違い

株式会社 合同会社
定款の認証 公証役場で認証を受ける(会社法第30条) 不要
登録免許税 資本金の額×0.7%(最低15万円) 資本金の額×0.7%(最低6万円)
定款の認証手数料 1万5千円〜5万円 かからない
決算公告 毎年、貸借対照表などを公告する(会社法第440条) 義務なし

株式会社は、設立の費用が合同会社より高く、決算公告の義務もあります。そのかわり、「株式会社」という名前が取引先や採用の場面で知られている点を重く見る人もいます。合同会社は、設立の費用を抑えられ、決算公告の義務もありません。どちらがよいかは、取引先の業界や、将来人を増やす予定があるかで変わります。

設立にかかる費用

登録免許税

国税庁の登録免許税の税額表(タックスアンサー No.7191)では、設立登記の登録免許税は次のとおりです。

  • 株式会社:資本金の額の1,000分の7。15万円に満たないときは15万円
  • 合同会社:資本金の額の1,000分の7。6万円に満たないときは6万円

資本金が少ない小さな会社なら、多くは最低額の15万円(株式会社)か6万円(合同会社)になります。

市区町村の「特定創業支援等事業」を受けて証明書をもらうと、この登録免許税が半分(株式会社は最低7.5万円、合同会社は最低3万円)になります(中小企業庁)。くわしくは開業するときに使える補助金・支援制度の全体像にまとめています。会社を作る前に受けておく必要があります。

定款の認証手数料(株式会社だけ)

日本公証人連合会によると、株式会社の定款の認証手数料は、資本金の額などに応じて次のとおりです。

資本金の額など 手数料
100万円未満 3万円(次の3つにすべて当てはまれば1万5千円)
100万円以上300万円未満 4万円
それ以外 5万円

1万5千円になるのは、2024年12月1日から、資本金100万円未満で、①発起人が全員個人(自然人)で3人以下、②発起人が設立時に発行する株式をすべて引き受ける、③取締役会を置かない、の3つをすべて満たす場合です。一人で作る小さな株式会社なら、当てはまることが多い条件です。

定款の収入印紙(紙の場合)

国税庁の印紙税額の一覧表(タックスアンサー No.7141)では、会社の設立のときに作る定款の原本には4万円の収入印紙が必要です。国税庁は、印紙税がかかるのは紙の「文書」で、電磁的記録は文書に含まれないとしています。定款を電子データ(電子定款)で作れば、この4万円はかかりません。

費用の目安

株式会社 合同会社
登録免許税 15万円〜 6万円〜
定款の認証手数料 1万5千円〜5万円 なし
定款の収入印紙 紙なら4万円、電子定款なら0円 紙なら4万円、電子定款なら0円
合計(電子定款・資本金が小さい場合) 16万5千円〜 6万円〜

このほかに、定款の謄本や登記事項証明書の手数料、会社の印鑑を作る費用などがかかります。司法書士などに頼む場合は、その報酬も加わります。

設立の手順

  1. 会社の基本事項を決める:会社名(商号)、本店の所在地、事業の目的、資本金の額、事業年度、役員
  2. 定款を作る:紙か電子定款かを決める
  3. 定款の認証を受ける(株式会社だけ):公証役場で認証を受ける
  4. 資本金を払い込む:発起人の口座に払い込み、払い込みを証明する書類を作る
  5. 法務局に設立登記を申請する:会社は、設立の登記をすることで成立します(会社法第49条・第579条)
  6. 登記事項証明書と印鑑証明書を取る:設立後の届出や、法人口座の開設に使う

会社の書類をWebで作れる会社設立のサービスもあります。

この記事で紹介しているサービス:弥生のかんたん会社設立、マネーフォワード クラウド会社設立

自分で進めるより、税理士に相談しながら会社を作りたい人は、税理士法人経営サポートプラスアルファの法人化の相談のように、法人化の相談を受け付けている税理士法人を使う方法もあります。

設立したあとの届出

出し先 書類 期限
税務署 法人設立届出書(定款の写しなどを添付) 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内
税務署 青色申告の承認申請書(第1期から青色申告にする場合) 設立の日以後3か月を経過した日と、第1期の事業年度終了の日の、いずれか早い日の前日まで
税務署 給与支払事務所等の開設届出書(役員報酬や給与を払う場合) 開設の日から1か月以内
年金事務所 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 事実発生から5日以内
都道府県・市区町村 法人設立の届出 自治体ごとに決まっている
税務署 個人事業の開業・廃業等届出書(個人事業をやめる届出) 個人事業をやめた年分の確定申告期限まで

税務署への届出の期限は、国税庁のタックスアンサー No.5100(新設法人の届出書類)と No.2090、手続の案内 A1-5 にもとづきます。日本年金機構によると、法人の事業所は、事業主のみの場合も含めて健康保険・厚生年金保険の適用事業所になり、新規適用届は事実発生から5日以内に出します。

都道府県と市区町村への届出の期限と様式は、自治体ごとに違います。本店を置く都道府県税事務所と市区町村のホームページで確かめてください。

個人事業は、やめた年の分の確定申告を、翌年に個人として行います。

法人化の手順チェックリスト

  • 株式会社か合同会社かを決めた
  • 会社を作る前に、特定創業支援等事業を受けるか決めた
  • 会社名・本店所在地・事業の目的・資本金・事業年度を決めた
  • 定款を紙で作るか、電子定款にするか決めた
  • (株式会社)公証役場で定款の認証を受けた
  • 資本金を払い込み、払い込みを証明する書類を作った
  • 法務局に設立登記を申請した
  • 2か月以内に、税務署へ法人設立届出書を出した
  • 期限までに、青色申告の承認申請書を出した
  • 役員報酬の額を、事業年度の初めから3か月以内に決めた
  • 会社としてインボイスを出すなら、会社として登録申請をした
  • 5日以内に、年金事務所へ新規適用届を出した
  • 都道府県・市区町村に法人設立の届出を出した
  • 個人事業の廃業届(課税事業者なら消費税の事業廃止届出書も)を出し、個人の最後の確定申告の予定を立てた

まとめ

法人化の費用は、電子定款で資本金が小さい場合、株式会社で16万5千円から、合同会社で6万円からが目安です。手続きは、定款を作り、株式会社なら認証を受け、資本金を払い込んで設立登記をする順番です。設立したあとは、税務署・年金事務所・自治体への届出と、個人事業の廃業届まで済ませて完了です。会社を作る前に特定創業支援等事業を受けておくと、登録免許税が半分になります。

出典