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開業の手続きと順番

初めて従業員がいる年の年末調整のやり方:手順と期限、令和8年分の変更点

この記事の結論

  • 年末調整は、給与を払う側が、その年最後の給与を払うとき(通常は12月)に、1年分の所得税を計算し直して、毎月天引きした額との差を精算する手続き。扶養控除等申告書を出した従業員が原則として対象
  • 令和8年分は、12月1日から基礎控除の引上げ(最大104万円)や給与所得控除の最低保障額の引上げ(65万円→74万円)が効く。12月の年末調整は改正後の額で計算する
  • 精算した税は令和9年1月12日(納期の特例を受けていれば1月20日)までに納める。源泉徴収票は1月31日までに従業員に渡し、給与支払報告書を市区町村に出す

開業して初めて人を雇った年は、12月に年末調整という作業が待っています。毎月の給与から天引きしてきた所得税は、あくまで仮の金額です。年末に1年分の正しい税額を計算し直して、払いすぎていれば返し、足りなければ追加で預かります。

この記事では、国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」と関連資料(2026年10月26日確認)をもとに、初めて年末調整をする個人事業主・小さな会社向けに、手順と期限をまとめます。令和8年分は税制改正で計算に使う額が変わる年なので、その点も確かめます。

開業した後に人を雇う人は多い

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の平均従業者数は2.8人、調査時点では3.9人で、開業時から1.1人増えていました(従業者数には経営者本人を含みます)。調査の対象は、日本政策金融公庫が2024年4月〜9月に融資した、融資の時点で開業後1年以内の企業です(回答2,165社)。

開業してから1年ほどのあいだに、人を雇い始める事業者が少なくないことがわかります。人を雇えば、毎月の源泉徴収に加えて、年末調整も給与を払う側の仕事になります。

初めての年末調整でよくある失敗

国税庁は、年末調整で誤りやすい点を「年末調整チェック表」にまとめています。それと手引きをもとに、初めての年に起きやすい失敗を挙げます。

  1. 12月になってから年末調整を知る:年末調整の計算には、従業員から出してもらう申告書が必要です。国税庁のQ&Aも、12月に入ってから書類を受け取ったのでは間に合わないことを想定して、改正を反映した書類を12月1日より前に受け取ってかまわないとしています。11月のうちに配って集めるのが安全です。
  2. 雇ったときに扶養控除等申告書をもらい忘れる:この申告書は、原則としてその年最初に給与を払うときまでに出してもらうものです。年末調整は、この申告書を出した人について行います。もらい忘れていても、年末調整をするときまでに出してもらえば、その内容で年末調整ができます。チェック表の最初の項目も「提出漏れとなっている人はいないか」です。
  3. パートやアルバイトは対象外だと思い込む:対象かどうかは、正社員かパートかではなく、扶養控除等申告書を出しているかどうかで決まります。手引きの「対象になる人」には、パートタイマーとして働く人が年の途中で辞めた場合の扱いまで書かれています。
  4. 家族の変化を申告してもらっていない:年の途中で家族が就職・結婚したときなどは、従業員に異動の申告をしてもらいます。令和8年分は、所得要件の改正で新しく扶養に入る家族がいる人も、申告が必要です。
  5. 基礎控除を去年と同じ額で計算する:チェック表は、基礎控除の額が昨年分と異なると注意しています。基礎控除申告書の出しもれにも注意が必要です。
  6. 納める税がないので納付書を作らない:チェック表では、納める税額がない場合でも、所得税徴収高計算書(納付書)を作るよう求めています。
  7. 1月の期限を忘れる:精算した税の納付、源泉徴収票の交付、市区町村への給与支払報告書の提出は、どれも1月に期限があります。なお、年末調整が終わったあとに家族の変化がわかった場合は、源泉徴収票を渡す1月31日までなら、年末調整をやり直せます。

年末調整とは何か

年末調整は、給与を払う側(給与の支払者)が、従業員の1年分の給与について所得税を計算し直し、毎月の給与から天引きした税額(源泉徴収税額)との差を精算する手続きです。国税庁の手引きによると、年末調整はその年最後に給与を払うときに行うことになっているので、通常は12月に行います。

精算の結果、天引きした額のほうが多ければ従業員に返し(還付)、少なければ追加で預かります(徴収)。

年末調整の対象になる人・ならない人

国税庁の手引きでは、年末調整は、原則として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出している人の全員について行うとしています。

対象になる人 対象にならない人
1年を通じて勤めている人 その年の主な給与の収入金額が2,000万円を超える人
年の途中で就職し、年末まで勤めている人 2か所以上から給与をもらっていて、ほかの勤め先に扶養控除等申告書を出している人
年の途中で退職した人のうち、一定の人(12月の給与を受け取った後に退職した人など) 年の途中で退職した人(左の一定の人を除く)
扶養控除等申告書を出していない人

年末調整の対象にならない人は、自分で確定申告をして税額を精算することになります。手引きは、1か所から給与をもらう人で、年末調整までに扶養控除等申告書を出していない人には、出すように伝えるよう求めています。

令和8年分の変更点

令和8年度税制改正で、次の改正が令和8年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます(国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」)。

  • 基礎控除の引上げ:基礎控除の額が、合計所得金額に応じて最大104万円になります
  • 給与所得控除の最低保障額の引上げ:65万円から74万円に上がります
  • 扶養親族などの所得要件の改正:扶養親族などの合計所得金額の要件が62万円以下になります(給与だけの場合、給与の収入金額が136万円以下)

国税庁は、令和8年11月までの給与の源泉徴収には変更がなく、12月に行う年末調整で、改正後の基礎控除額などを使って1年分の税額を計算し、改正前の税額表で天引きしてきた額と精算するとしています。つまり、今年の年末調整は、改正後の額で計算することになります。給与計算ソフトを使っている場合は、令和8年分の年末調整に対応した版になっているか確かめてください。

また、改正で新しく扶養親族などの要件を満たすことになった家族がいる従業員は、扶養控除等申告書などを出し直す必要があります。

年末調整の手順

国税庁の手引きでは、年末調整を次の順番で行います。

  1. 申告書を受け取って、中身を確かめる
    • 扶養控除等(異動)申告書
    • 基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・所得金額調整控除申告書
    • 保険料控除申告書(生命保険料・地震保険料・社会保険料など)
    • 住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除を受ける人)
  2. 1年分の給与と、天引きした税額を集計する
  3. 給与所得控除後の給与の金額を出す(国税庁の表を使います)
  4. 所得控除を差し引いて、課税される給与所得の金額を出す
  5. 1年分の税額(年調年税額)を計算する
  6. 天引きした額との差を精算する(多ければ返し、少なければ預かる)

計算は、国税庁が公開している「年末調整計算シート」(Excel)や、給与計算ソフトでもできます。

申告書を集める段取り

  1. 11月中に、従業員へ申告書の用紙と記入例を渡す
  2. 保険料控除を受ける人には、保険会社から届く控除証明書を添えてもらう
  3. 戻ってきた申告書を、記入もれ・証明書の添付もれがないか確かめる
  4. 12月の給与の計算に間に合うように、締め切りを決めて伝える

年が明けてからの期限

やること 期限
年末調整で精算した所得税を納める 令和9年1月12日(火)。納期の特例を受けている場合は令和9年1月20日(水)
源泉徴収票を従業員に渡す 令和9年1月31日まで(年の途中で退職した人には、退職の日から1か月以内)
給与支払報告書を市区町村に出す 令和9年1月31日まで(従業員の1月1日時点の住所地の市区町村)
源泉徴収票を税務署に出す 令和9年1月31日まで。ただし、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署に出したものとみなされる

最後の行は、令和9年1月1日以後に出す源泉徴収票から始まる仕組みです。国税庁のタックスアンサー No.7411 によると、市区町村に給与支払報告書を出した場合は税務署に出したものとみなされ、税務署に出す用の源泉徴収票を作る必要がなくなります。ただし、従業員に渡す源泉徴収票は、これまでどおりすべての人に必要です。

納期の特例とは

天引きした所得税は、原則として給与を払った月の翌月10日までに納めます。給与をもらう人が常時10人未満の事業者は、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出すと、1月〜6月分を7月10日、7月〜12月分を翌年1月20日にまとめて納められます(タックスアンサー No.2505)。

給与計算ソフトか、外部に頼むか

従業員が1人か2人なら、国税庁の年末調整計算シートで自分で計算することもできます。毎月の給与計算と年末調整をまとめて楽にしたいなら、給与計算ソフトを使うか、税理士や給与計算の代行に頼む方法があります。税理士に頼むタイミングは、税理士はいつから必要?開業1〜2年目の頼みどきと、費用・探し方にまとめています。

この記事で紹介している給与計算ソフト:弥生給与 Next

初めての年末調整チェックリスト

  • 従業員全員から扶養控除等(異動)申告書を出してもらった
  • 改正で扶養の要件が変わる家族がいないか、従業員に確かめた
  • 11月中に、基礎控除申告書などの申告書と保険料控除申告書を配った
  • 控除証明書の添付もれを確かめた
  • 令和8年分(改正後)の額で計算できるソフト・計算シートを用意した
  • 12月の給与で、過不足を精算した
  • 納める税がなくても、所得税徴収高計算書(納付書)を作った
  • 令和9年1月12日(納期の特例なら1月20日)までに納付した
  • 令和9年1月31日までに、源泉徴収票を従業員に渡した
  • 令和9年1月31日までに、給与支払報告書を市区町村に出した

まとめ

年末調整は、給与を払う側が12月に、従業員の1年分の所得税を計算し直して精算する手続きです。初めての年は、11月のうちに申告書を集め始め、12月の給与で精算し、1月の納付・源泉徴収票の交付・給与支払報告書の提出まで済ませれば完了です。令和8年分は基礎控除などが変わるので、改正後の額で計算できるかを先に確かめておきましょう。

出典