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道具の比較

個人事業主の棚卸のやり方:年末の手順とチェックリスト

この記事の結論

  • 商品や材料を仕入れて売る商売なら、年末(12月31日)の在庫を数える棚卸が必要。経費になる売上原価は「年初の棚卸高+1年の仕入高-年末の棚卸高」で決まる
  • 数え方は、品物の種類・型などごとに実際に数える。評価方法を届け出ていなければ、年末にいちばん近い時期に仕入れた単価で計算する(最終仕入原価法)
  • 忙しくて12月31日に数えられないときは、前後の日に数えて12月31日時点の数に直してよい。数えたときのメモは棚卸表と一緒に残す

商品や材料を仕入れて売る商売では、年末に**在庫を数える「棚卸」**が欠かせません。棚卸をしないと、その年の経費(売上原価)が正しく計算できず、利益と税金がずれてしまいます。

この記事では、国税庁の「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」と手続の案内をもとに、開業して初めての年末を迎える個人事業主向けに、棚卸のやり方を順番にまとめます。

開業1年目は、決算の作業でつまずきやすい

日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時に苦労したこととして「財務・税務・法務に関する知識の不足」を挙げた人が36.4%いました。調査の対象は、日本政策金融公庫が2024年4月〜9月に融資した、融資の時点で開業後1年以内の企業です(回答2,165社、三つまでの複数回答)。

棚卸は、1年に1回しかしない作業です。初めての年末は、何を数えて、どう計算するのかがわからず、確定申告の直前に慌てることになりがちです。

棚卸でよくある失敗

開業した人の相談でよくあるのが、仕入れた分を全部その年の経費にしていて、年末の在庫を数えていなかったというものです。仕入れた金額がそのまま経費になると思っていて、棚卸という作業があること自体を知らなかった、という形です。売れ残って年末に残っている商品の分は、その年の経費になりません。

ほかにも、次のような失敗がよくあります。

  1. 預けている商品を数え忘れる:ほかの店に置いてもらって売る(委託販売)商品は、手元になくても、売れるまでは自分の在庫です。国税庁の所得税基本通達では、委託販売の収入は、預けた先がその商品を売った日の分とされています。年末に売れずに残っている分は、自分の棚卸に入れます。
  2. 店頭の分だけ数える:倉庫、自宅、車の中に置いてある分を忘れがちです。数える前に、置き場所をすべて書き出しておきます。
  3. 包装材料や消耗品を忘れる:手引きでは、まだ使っていない包装材料・ガソリン・事務用品なども棚卸の対象です(通常の年に比べて特に増えていなければ、省略してもかまいません)。
  4. 家で使った店の商品を売上に入れていない:店の商品を家で使ったり人にあげたりした分も、収入金額になります(くわしくは下の「お店の商品を家で使ったとき」)。
  5. 年が明けてから数える:1月に入って売り買いが進むと、12月31日時点の数がわからなくなります。
  6. 数えたメモを捨てる:手引きは、数量などを書いたメモを棚卸表と一緒に保存するよう求めています。棚卸表や納品書などは、7年間(一定の書類は5年間)保存する決まりです。

棚卸で何がわかるのか

国税庁の手引きによると、その年の必要経費になる商品などの「売上原価」は、その年に仕入れた金額そのままではなく、次の式で計算します。

売上原価 = 年初(期首)の棚卸高 + 年間の仕入高 - 年末(期末)の棚卸高

まだ使っていない包装材料や事務用品などの消耗品も同じで、「消耗品費 = 年初の棚卸高 + 年間の購入高 - 年末の棚卸高」になります。年末の棚卸高がわからないと、この式が計算できません。だから棚卸が必要になります。

開業した年は、年初の棚卸高はありません(ゼロから始まります)。その年の年末の棚卸高が、翌年の年初の棚卸高になります。

何を数えるのか

国税庁の手引きでは、棚卸しをしなければならない資産を次のように示しています。

区分 例
商品など 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、副産物、作業くずなど
消耗品など まだ使っていない包装材料、ガソリン、事務用品などの消耗品や、使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満の少額な減価償却資産

ただし、通常の年に比べて特に増えていない消耗品などは、棚卸を省略してもかまわないとされています。

いつ数えるのか

棚卸は12月31日にするのが原則です。ただ、手引きは、忙しくて年末にできない場合は、年末から多少前後した日に棚卸をしてもよいとしています。その場合は、12月31日と棚卸をした日のあいだの売上や仕入れなどから12月31日時点の棚卸高を計算し、その計算方法を明らかにしておく必要があります。

前後の日に数えたときの直し方(例)

12月29日に数えて、30日・31日にも営業した場合の考え方です。

  • 29日に数えた数量から、30日・31日に売れた数を引く
  • 30日・31日に仕入れた数を足す
  • 何をどう足し引きしたかを、メモに残しておく

どう数えるのか

商品や消耗品などを、種類・品質・型などの別に、実際に数えます。手引きによると、商品出入帳などで毎日の在庫を記録し、毎年一定の時期に実地棚卸をしてその正しさを確かめている場合は、その帳簿をもとに年末の棚卸高を計算して、年末の実地棚卸を省略できます。

数える日の段取り

  1. 置き場所ごとに担当と順番を決める(店頭・倉庫・車など)
  2. 品物ごとに「品名・型・数量」を書く表を用意する
  3. 数えた表に日付と数えた人を書く
  4. 傷んだもの・売れ残りで値下げしないと売れないものは、別に分けて書く
  5. 数えた表は、棚卸表と一緒に保存する

いくらで計算するのか(評価方法)

届け出ていなければ「最終仕入原価法」

手引きによると、棚卸資産の評価方法は、あらかじめ税務署に届け出た方法(先入先出法、総平均法、売価還元法、低価法など)で評価します。届け出ていない場合は、次の最終仕入原価法で評価します。

年末にいちばん近い時期に仕入れたその商品の仕入単価 × 年末の数量 = 年末の棚卸高

たとえば、ある商品を年の途中で単価800円、12月に単価850円で仕入れ、年末に20個残っていたなら、850円×20個=1万7,000円がその商品の年末の棚卸高です(金額は説明のための例です)。

国税庁の手続の案内(A1-17)でも、届出で選ばなかった場合は最終仕入原価法が適用されるとしています。評価方法を届け出る場合の期限は、新たに事業を始めた年分の確定申告期限までです。

傷んだものや売れ残り

手引きは、災害で著しく傷んだものや、棚ざらし・流行遅れなどで通常の値段では売れないもの、通常の方法では使えないものについて、ほかの棚卸資産と区別して、12月31日時点の処分可能な価額で評価することもできるとしています。

お店の商品を家で使ったとき

手引きによると、棚卸資産を家事のために使ったり、人にあげたりしたときは、その分も収入金額になります。原則として通常の販売価額で計算しますが、仕入価額(仕入価額が通常の販売価額のおおむね70%より低いときは、通常の販売価額の70%)で計算しても差し支えないとされています。

会計ソフトで棚卸をどう入れるか

会計ソフトでは、年末の棚卸高を入力して売上原価を出すのが一般的です。入力する画面や手順はソフトごとに違うので、使っているソフトのヘルプで確かめてください。日々の仕入れを会計ソフトに記帳しておけば、年末にするのは「数えて、単価をかけて、入力する」が中心になります。会計ソフトの選び方は、開業1年目の会計ソフトの選び方にまとめています。

この記事で紹介している会計ソフト:やよいの青色申告オンライン、マネーフォワード クラウド確定申告

年末の棚卸チェックリスト

  • 数える日を決めた(12月31日か、その前後の日)
  • 店頭・倉庫・自宅・車など、置き場所をすべて書き出した
  • ほかの店に預けて売っている商品の、売れ残りの数を確かめた
  • 品名・型・数量を書く表を用意した
  • 使っていない包装材料・消耗品も数えるか決めた
  • 傷んだもの・売れ残りを分けて書いた
  • 前後の日に数えた場合、12月31日時点の数に直した
  • 品物ごとに、年末にいちばん近い仕入単価を調べた(届出をしていない場合)
  • 年末の棚卸高を会計ソフトなどに入力した
  • 数えた表とメモを、棚卸表と一緒に保存した

まとめ

棚卸は、年末に残っている商品や材料を数え、売上原価を正しく計算するための作業です。12月31日(またはその前後の日)に、品物の種類ごとに実際に数え、評価方法を届け出ていなければ年末にいちばん近い仕入単価をかけて棚卸高を出します。数えたメモは棚卸表と一緒に残し、会計ソフトに入力すれば、確定申告の準備はぐっと楽になります。

出典